クィアゲームに関心がある人にオススメしたいゲーム(ゲームとことば2023)

クィアゲーム部

【UPDATE】記事末に、STarGatherさんによる『NOISZ STΔRLIVHT』の紹介文を追記しました(2023/12/09)。

アドベントカレンダー企画「ゲームとことば(2023年版)」に寄せた企画記事です。

こんにちは!
元ゲームライターのdashimaruと申します。

ねこかにクラブという名義で海外のインディーゲームに触れたり、人と関わりながらゲームについて考える活動(例①例②)をゴソゴソとやっているのですが、気になりながらも踏み込めずにいたクィアゲームの世界を一緒に旅してくださる方を(誰からも反応なかったらどうしよう…と)恐る恐る募ってみました。

するとありがたいことに5名の方々からご応募いただき、「せっかくなので一度オンラインで集まってお話し会でもしませんか?」と提案したところ全員がまさかの快諾。スケジュールなどもろもろの調整を経て実現したのが先週末(12/2)のことでした。

ほとんどが初めましての状態で、顔合わせが済んだばかりではありましたが「こういう企画がありまして…」と「ゲームとことば」への参加を呼びかけたdashimaru。残されていたラスト一枠が本日12/6だったため、時間的にはかなりタイトだったものの3名の有志が超特急で原稿を送ってくださり何とか形にすることができました!

というわけで「クィアゲームに関心がある人にオススメしたいゲーム」と題して、一人一本ずつ挙げてもらった作品を以下に紹介していきます。話が急だったこともあり、内容についてはそれぞれ自由に書いていただき最後に若干の表記統一を行いました。

※ちなみにここでいう「クィアゲーム」とは、LGBTQ+などのジェンダーやセクシュアリティ要素を含んだゲーム作品というような意味合いです

『Desta: 狭間の記憶』(緑野/みどりの

配信プラットフォーム:SteamNintendo SwitchiOSAndroid
日本語対応:あり(字幕・UI)
対象年齢:指定あり(プラットフォームによる)
※iOS/Android版はNetflix会員限定(追加料金なしでプレイ可能)

クィアゲームに関心がある…
だけど、普段あんまりゲームをしない、複雑な内容や長時間プレイ必須の壮大なゲームは苦手かも…
そんな方にこそおすすめしたいのが
『Desta: 狭間の記憶』です!

主人公のデスタはノンバイナリーの若者で、仲が良かった父親の死後、しばらく離れていた故郷に久しぶりに帰ってきます。

折り合いが悪い母親や、ささいなきっかけで仲違いしてしまった親友、デスタを頑なに女として扱おうとする男友達、そんな自分を取り囲む全てから一度は去ることを選んだ主人公がデスタなりの方法で葛藤しながらも自分が伝えたかった感情や周囲の人々に向かい合っていくというストーリーです。

ゲームジャンルはターン制のドッジボールバトルゲームで、基本的にはボールを投げる方向を選択するだけのシンプルな内容になっています。

普段あんまりゲームをしない人でも抵抗感なくサクッとプレイできるし、逆に歯応えのあるゲームをしたい人は使用するスキルにこだわったり一回の攻撃でボールをバウンドさせて複数人を一度に倒すことを狙ってみたり、幅のある遊び方も可能です。

そして、このボールのやりとり(キャッチしたりぶつけたり…)が他者、そして自己との対話の比喩になっており、デスタは夢の中でバトルを繰り返し少しずつ現実との対峙方法を学んでいきます。

ストーリーは先ほどあらすじでも語った様に、ノンバイナリー当事者にとっては辛いミスジェンダリング(※)などを含むものなんですが、該当するシナリオでは冒頭にアラートがあり、その部分だけ他の内容に差し替えるクィアフレンドリーな工夫もあります。

※他者のジェンダーに対して誤った認識をすること。またはその誤った認識に基づいた取り扱いをすること。意図的なものも、無意識のものも含む

そしてこのゲーム、どれだけ狙ってやってるのかわかりませんが翻訳がものすごく“コテコテ”の関西弁になっています。おそらく原語版でのイントネーションの特徴を再現しようという試みなんだと思うのですが…。

この“コテコテ”翻訳を味わい「そうはならんやろ!」「そこはそう訳すんかい!」とツッコミを入れてもらうためにも一度実際プレイしてもらいたいです!

冗談は置いておくとしても、開発はなんとあの名作『Monument Valley』なども制作したustwo gamesなのでクオリティも折り紙つきです。

ゲーム全体を通して、ノンバイナリー可視化等への志を感じられる一本で是非おすすめです。

『Virgo Versus The Zodiac』(STarGather

配信プラットフォーム:SteamGOG.comNintendo SwitchPS5/PS4Xbox Series X|S/Xbox One
日本語対応:あり(字幕・UI)
対象年齢:指定あり(7歳以上)

あなたは『Virgo Versus The Zodiac』というゲームをご存じだろうか。この宇宙を舞台にした一際変わったゲームは黄道十二星座を擬人化したキャラクターによる愛憎劇が繰り広げられる。

ストーリーはこうだ。「純度の女王ヴァーゴとなってゾディアックを王座から引きずり下ろし、銀河にあふれる異端者たちを追放してあなたの黄金時代を取り戻そう。」

これだけ聞くと、王道RPGに聞こえるだろう。しかし、本作は独特さやある種の不親切さは始めはプレイヤーを置いてけぼりにする。活動、柔軟、不動といった聞きなれない属性やなんの説明もなしに飛び交う専門用語、なにより主人公である乙女座を擬人化したキャラクター、ヴァーゴのお嬢様口調での発言に圧倒されるであろう。「三流音楽家を救いにきたわけではなくてよ。おまえたちなど有象無象。異端者。不信者。この銀河の不純物ですわ。」「あまりの弱さにカプリコーンの面汚しになりますわ。無能すぎて主人の名を汚すとは。」

戦闘もとても難易度が高い。キャラクターごとに指定されたボタンを押したり連打したりすることで攻撃や防御を行うが度々シビアなタイミングを要求される。

これだけ聞くと敷居の高いゲームに思えるだろう。実際、その通りであるが戦闘は慣れてくると装備を強化したり、タイミングを測ることができるようになり、ストーリーも周回を重ねればこの会話はなにを指しているかカチッとはまっていくようになる。このようなプレイ時間の増加に伴い楽しさが増えていく側面もある。

さらにキャラクターであるゾディアックたちにも注目していただきたい。彼女たちには各々のスタンスにたち、自身の星界を守ろうとする。企業を発展させるカプリコーン、自身の妻であるトーラスに尽くすスコルピオ、友情と自由を重視する気ままなギャルであるサジタリウスなど様々な正義とスタンスが存在する。

クィアゲームとしても本作は特徴的だ。ゾディアックのほとんどが同性愛者であり主人公ヴァーゴの恋人であるパイシーズはパンセクシャルであり、先述したトーラスとスコルピオは正式に結婚しているし、粗暴なヤンキーであるアリエスはノンバイナリーだ。このように多様な性が自然に登場していることも特徴だろう。

以上を持って『Virgo Versus The Zodiac』の紹介を終える。スペースオペラでクィアなゲーマーはぜひとも遊んでみてはどうだろうか?

『NOISZ STΔRLIVHT(略称 NOISZ SL)』(叶絵

公式サイト
ジャンル:弾幕リズムゲーム
配信プラットフォーム:iOSAndroid(基本プレイ無料)
日本語対応:あり(字幕・UI)
対象年齢:指定あり(プラットフォームによる)

【注意描写】
・暴力による脅迫、家族内の対立あり
・戦闘、血、死の描写あり
・キスの描写あり
・話の進行上、トランスフォビア、アウティングの描写あり
・前日譚ゲーム『2ECONDS TO STΔRLIVHT: My Heart’s Reflection』(Steamitch.ioiOSAndroidにおいて虐めの描写あり
※iOS、Androidでは『2ECONDS TO STARLIVHT+』として『2ECONDS TO STΔRLIVHT: Forever My Diamond』とセットで収録

iOSの公式ページ

公式キャラ紹介

一言で言うと何から何まで自由すぎるLGBTQ弾幕リズムゲームです。

プロデューサー(プレイヤーの分身)以外の主要キャラ5人の内、4人が女性愛者、ハクノがトランス女性、ヒトリがトランス男性です。

ノベルパートでは選択肢が発生し、一部のストーリーの展開が変化します。

プロデューサーがレズビアンかどうかはプレイヤーに委ねられており、後に出てくる選択次第でここでの選択も後に影響が出て来ます。

弾幕音ゲーパートは全体的に癖が強く、例えばCHAPTER 1.Ⅰ、つまり一番最初に解禁する譜面の一部はこんな感じでこのゲームのマスコットであるWhatが高速で譜面を横断し操作キャラを轢いて来ます。何で???

※最初に解禁する譜面です

難易度の幅は広く、最高難易度の曲は実装から約4ヶ月クリア報告が出ませんでした(理論値やフルコンボでは無い)。
他にも1.5倍速チャレンジやノート判定幅25%化チャレンジ、操作反転チャレンジなどの複数のチャレンジが存在し、ゲームのプレイに幅が広がっています。
また、特定の条件を満たすことでTitleを入手でき、Title集めも1つのやり込み要素として機能しています。

12/31に新しいCHAPTERが追加予定なので、今からプレイしてストーリーを進めておくことがおすすめです(特に無課金でプレイする場合)。

過去に私(叶絵)が作成した、基本的なゲームの進め方やシステムなどをまとめた動画はこちら

『We Dwell In Possibility』(dashimaru

配信プラットフォーム:itch.ioVirtual Factory公式サイト(Manchester International Festival)
日本語対応:なし
対象年齢:指定あり(18歳以上)
※ヌード表現を含みます

以上、4作品をお届けしました!

いい意味でバラバラの(バラエティに富んだ)ラインナップになったのではないかな…と感じており、関心がある方はもちろん今まであまり馴染みがなかったという方にも、クィアゲームに親しむきっかけの一つになれば幸いです◎

また今回の企画を通して、ご応募くださったみなさんのクィアゲームへの思いも垣間見ることができましたし、条件が合わずに参加できなかった他のメンバーの方々ともこれから関係を深めていくのがより楽しみになりました。

今後の活動についてはまだまだ模索中ですが「#クィアゲーム部」というハッシュタグを使って、Xを中心に定期的な発信をしていけたらと考えています。こちらも引き続きご注目いただけるとうれしいです!

最後になりますが、クィアゲームについてさらに深く知りたいという方へお役立ちリンクをいくつか。

【国内】
クィアなゲームまとめ
…海外のクィアゲームやコミックなどについて積極的に発信しているライターのまきちゃんさんが編集中の膨大なデータリスト。作中のクィア要素における詳細な情報(プレイヤーキャラがクィア/クィアキャラがいる/クィアネスが主題 etc.)がていねいにまとめられていて、とても参考になります。

フェミニスト、ゲームやってる(WEZZY)
…アーティスト/ライターの近藤銀河さんによる連載記事。クィアやフェミニズムといった視点から作品に込められたコンテクストを紐解く文章は、国内のゲームコミュニティにとって貴重な存在。サイト閉鎖に伴い2024年3月をもってウェブ上での閲覧はできなくなりますが、同年春に書き下ろしを加えた単行本として出版が予定されているそうです。

【海外】
Gayming Magazine
…クィアゲーム(およびコミック)に特化した大型ウェブメディア。クィアゲームに関する情報が網羅的に掲載されているほか、主催するアワードやLGBTQ+ストリーマーと提携して行うアンバサダー制度といった取り組みを通じて、コミュニティ形成においても先進的な役割を果たしています。

PinkNews
…特に専門のメディアというわけではないのですが、時々アップされるゲーム系の記事が独自の切り口で興味深いです。クィアゲーム界隈の動向を知りたい方は合わせてぜひ。

***

本記事の公開後、STarGatherさんから叶絵さんもオススメしていた『NOISZ STΔRLIVHT』についての紹介文が届きましたので以下に掲載します。「ゲームとことば」に触発されて再度筆を取られたとのことで、うれしい限りです!(作品の概要については繰り返しになるため割愛)

『NOISZ STΔRLIVHT』(STarGather

『NOISZ』というゲームをご存知だろうか?STG、音ゲー、ノベルを強引に掛け合わせたゲームで2018年にSteam(今はNintendo Switchでも発売されている)でひっそりと販売された(わたしが気がついたのは後述するゲームを遊んだ後だったが)先述した通り、音ゲーとSTGを組み合わせた特異なゲームで高難易度かつ決して知名度が高いわけではないが一部のコミュニティでは熱狂的な人気を誇り人間離れしたスコアラーたちにより曲が攻略されていった。

そして、2022年、iOSAndroidにて新作、『NOISZ STΔRLIVHT』が発表された。このゲームをジャンルを一言で説明すると「LGBTQアイドル弾幕ビジュアルノベル音ゲー」である。

…..なにがなんだか分からないと言われても仕方がない。プレイヤーは弾幕音ゲーの名の通り、4つのレーンから流れてくるノーツを演奏しながら弾幕を掻い潜ることになる。

これだけ聞くとよくある音ゲーに聞こえるかもしれないが本作は前作以上に個性的なゲームとなっている。まず、曲は基本的にフル尺で基本的には4分以上プレイすることが当たり前のようになっている。また、弾幕の密度も濃く演奏に気を取られているとあっという間に避けられなくてゲームオーバーになってしまうだろう。演奏も高難易度になれば四本指でプレイすることが求められマルチタスクを要求される。

加えて、ギミックも他のゲームにないものが満載だ。camelia氏によるとある曲では横から画面外からなぞの猫が突進していきGetty氏との曲では自機がスクリーンショットになって警告マークの嵐を避けることになる。他にも数学を解きながら曲を演奏したり弾幕で作られた迷路を攻略し、さらにはコラボ曲ではメイドインワ○オのようなミニゲーム集を遊ぶこととなる。挙げ句の果てには隠し曲では即死弾が出てくる。こうなるともう、避けるか死ぬかだ。

このような仕様が相まって難易度は高くなっており先述した隠し曲の最高難易度はクリア者が半年間おらず、現状一人しかいないという凄まじいものとなっている。

しかし、こちらも負けてはいない。プレイアブルキャラクターたちにはNOISZバーストと呼ばれているボムを持ち、ノーツ、弾幕問わずミスを自動的に無効にしたり弾幕を一定時間無効化する、体力が減り続けることと引き換えに弾幕を二回打ち消せるなど強力な効果を持ち合わせている。キャラのスキンごとにも特殊能力が存在し強化すればノーツを二回ミスを無効化できるなどうまく使えば高難易度をも攻略できるだろう。

キャラクターも個性的だ。音ゲーでストーリーに注目する人は少ないかもしれないが本作に関してはぜひとも読み込んでいただきたい。プレイヤーは四人のアイドルグループSTΔRLIVHTのプロデューサーとなって彼女たちのドラマを見届けることとなるがLGBTQを冠するだけあって多様性に満ちたものとなっている。

主人公のボクッ娘ゲーマーのGraceとグループのリーダーであるクールビューティーなSeraは共に同性愛者で恋人同士にあり、お菓子作りが大好きで心優しい赤髪の女の子であるSumireは解離性同一性障害であることが明言され双子の兄の人格を人格を宿しており、彼女のもう一人の人格であるHitoriは自身の存在の在り方に悩み、自由奔放で猫好きのHakunoはトランスジェンダー(MtF)だ。プレイヤーの分身となるプロデューサーも車椅子の女性であるとレプリゼンテーション性は高い。

ストーリーも謎多き武器「NOISZ」を与えられた四人が音楽の世界から現れる怪物、ノイズビーストに立ち向かいながらトップアイドルを目指すというもので謎が謎を呼ぶ展開やメンバー間の対立やSumireのもう一つの人格であるhitoriのドラマ、ライバルアイドルグループであるSunr愛seとの対決など目が離せない展開がつづいていく。

中でも注目していただきたいのはトランスジェンダーであるhakunoだ。彼女は普段は自由奔放かついい加減に振る舞うが過去の経験により辛い思い出を抱えており家族からも追い出されている。彼女のトラウマは激しく唯一自分を慕っている妹に対しても再会したときには取り乱してしまうほどだ。しかし、アイドルとしての活動やSunr愛seのリーダーとなった妹との競争、恋愛、そして仲間たちの助けを経てやがては家族から抑圧されている妹を助けたいと思うようになるなど深く掘り下げされている。終盤のチャプターで敵の策略によって誹謗中傷を受けた彼女がステージ上で出した演説は深く心に響いた。

また、開発会社であるAnarch Entertimentはクィアライツやトランスライツを強く支持する姿勢を打ち出しており2021年や2022年には曲の売上をトランスジェンダーの慈善団体に向けて寄付するなどの活動を行っている。

オリジナル曲にも注目していきたい。本作は描き下ろし楽曲が10曲以上あり、そのうち、半分は作中のアイドルグループが歌っているという設定だ。作中のアイドルには全て声優が割り当てられておりいずれもがアメリカの歌い手やアイドルだ。日本人にとっては聞きなれない方々が多く新鮮な気分で彼女たちの歌声を楽しめるだろう。歌自体もSeraとGraceが互いへの愛を歌いあう優しい曲調の「First Star」、本当の自分を見てくれない世界に苦しむHakunoとそれに手をさしのべて寄り添うsumireの優しさが映える「True」、ライバルアイドルグループSunr愛seの明るい歌声が響く「Rise Above」など名曲が多い。

また、これらの曲はYouTubeでも聞けるためもし、興味があるのならばぜひ一度聞いていただきたい。

このゲームのテーマ曲である「LIVHT MY WΔY」

ライバルアイドルグルーブSunr愛seの曲である「Rise Above」

以上でNOISZの紹介を終える今年の12.31には最終章である「True Heroes」のアップデートがされるため新たな体験がしたいSTGゲーマーや音ゲーマー、そして四人のアイドルたちの行く末を見届けたいプレイヤーはぜひ、インストールしてプレイしていただきたい。

また、前日譚となる『2ECONDS TO STΔRLIVHT+』がアプリ(iOSAndroid)で、2ECONDSと本編の間を描いた漫画『STΔRLIVHT IVKoma (JP)』がTwitter(現X)で読めるためそちらも楽しんでいただきたい。

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