プレスリリースのお手伝いをしてみて

雑記

相談を受けた経緯と結果

ショーケースイベントやSteam Next Festなど、大量のゲーム情報が一挙に押し寄せる時期が続きましたが、いかがお過ごしでしょうか。そうした中で私ドラゴンワサビポテトは、とある知り合いの方のプレスリリース作成をお手伝いする稀有な機会をいただきました。

ライターとして日ごろゲームニュースを書くうえで、プレスリリースを見かけるタイミングはしばしばあるのですが、用意する側の立場を経験したのは初めてでした。せっかくなのでその過程で発見したことや学んだことの一部を、ここに残しておこうと思います。

まずはお手伝いに至った経緯を簡単に。今回はMSBgamedev名義でゲームを開発しているまさぼちゃんからDMで相談を受けたのがきっかけでした。お互い京都在住なのを理由に、たまにメッセージのやり取りをしていた関係もあり、ご連絡くださったのかなと想像します。

依頼の概要は「現在Steamに向けて開発中のタイトル『リンカネーション・ジャーニー』の体験版を配信するので、それに合わせたプレスリリースを準備しており、よかったら確認してもらえませんか?」というもの。テキスト自体はまさぼちゃんの方ですでに書き上げている状態だったため、拝見して「このあたりの情報を厚くしていくといいかも!」とフィードバックをお伝えしたのが今回のおもなサポート内容になります。

結果から先に述べると、このたびのプレスリリースを通じた発信は大手ゲームメディア3誌(ファミ通.com電撃オンラインgamebiz)に記事として取り上げていただきました。冒頭でも触れたとおり、国内外でゲームの最新情報が数多く出ていた厳しい状況にもかかわらず、複数のメディアがリソースを割いて対応くださったのは大変ありがたいことです(プレスリリースの詳細や掲載記事が気になる方は、各誌のリンク先をご参照ください)。

これは必ずしもプレスリリース単体の力によるものではなく、まさぼちゃんが開発と並行し日々こまめに投稿を続けて認知度を得てきたり、確かな魅力を持つ作品づくりなどの土台が築かれていた部分が非常に大きかったように思われます。

「メディアに載りやすいプレスリリースとは」みたいなトピックをたまに目にすることもありますが、プレスリリースを機に掲載に至るケースは体感1~2割ほどで、メディアに従事する編集者やライターは情報収集力の高い人が多いため「中身や文脈が面白ければ、黙っていても勝手に発見されて記事になる」傾向が強く、やや実状と異なるところも少なくないと個人的には認識しています(こちらも機会を設けてどこかに書きたいと思いつつ)。

具体的に何をしたのか

では実際に体験版配信のプレスリリースについて、どのようなやり取りを経てブラッシュアップが行われたのかを記していきます。『リンカネーション・ジャーニー』はとりわけゲームシステムの面において、作者であるまさぼちゃんさんのユニークなこだわりが多く感じられたため、このあたりの特徴を押し出していくことが作品のアピールになると考えました。

一方で、記事を執筆する状況をイメージした際、独自の設定や世界観を読者に伝えるには「どこにオリジナリティがあるのか?(ニュースバリューの根幹)」を見極めるのが若干苦労するかもしれないと思った部分もあり、「ここってこういう解釈でよかったでしょうか…?もしこういった要素が存在するようでしたら、明示いただけるとよさそうです!」といった形でいくつかピンポイントに質問をさせていただきました。

タイトル名にも含まれている「Reincarnation(転生)」のシステムに関しては作品の核となるテーマであることも予想されたため、転生によってどういう効果があるのか、転生にはどのようなコストを必要とするのかなど、特に詳しく尋ねてみた次第です。

DMで伝えた内容の抜粋

それから、記事の見出しをつける際に用いられる、作品のフックになるであろう箇所もお伝えしています。今回の場合は「コマンドRPGに疲れた大人たちへ」というコンセプトが、まさぼちゃんの開発に込めた思いが強く現れている言葉だと感じたので「メール送付時の件名やプレスリリースの冒頭にもぜひ盛り込んでください!」と意図がより伝わるようプッシュさせていただきました。掲載媒体の見出しに改めて目を向けてみると、「疲れた大人たちへ」のワードは各誌とも拾っていただいているようです。

また、当初具体的に言及されていなかった「体験版のやり込み要素」についても、ディテールの共有は可能かをうかがいました。「体験版にやり込み要素がある」とプレスリリースに書かれている内容を伝えるのは簡単ですが、ライターとしてはもう少し情報を加えて記事にしたいところ。

とはいえそれを確認するために何時間も体験版をやり込み続けるのは書き手の負荷が大きいため、その手間を省略しつつも「隠しボス」という存在を引き出せたのは掲載の判断におけるハードルを少し下げるとともに、開発者しか知り得ない潜在的な価値を届けることにもつながったのではないかなと感じています。ユーザー目線では「セーブデータの正式版への引き継ぎが行えるか」といった点も気になったので、そちらも同様に質問をし、プレスリリースに反映いただきました。

まだ挙げ切れていないものもありますが、今回のサポートで携わった部分は以下の形にいったんまとめられるかと思います。

①ライター/ユーザー視点での情報の整理
②発信内容のコアバリューの掘り下げ
③記事化の際にフックとなるポイントの共有

お手伝いを経ての所感

このたびのプロセスを経て、ゲームメディアでの執筆経験がプレスリリースの作成やブラッシュアップに活かせるのではないかという手応えをわずかながら感じました。といっても自分ができることなんて、ほんの少し背中を押せたらいいなぐらいの些細なところでしかないのですが、まさぼちゃんのプレスリリースの情報がみるみる充実していく様子を目にしてうれしさがこみ上げてきたのも事実です。

ライターとしては同じニュースを複数の媒体で書く機会はほぼないため、開発者さんの思いや意図を汲み取ったプレスリリースが複数のメディアに届きそれぞれの読者に伝播するのは、ゲームにおける活動の幅がひとつ広がったようで新鮮な感覚もありました。もしまた頼ってくださる方がいらしたら、お役に立ちたい気持ちもありますので声をかけていただけたら幸いです(ボランティア的に状況と相談しつつにはなりますが、できる範囲でお力になりたいと思っております…!)。

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